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       題しらず 読人知らず  
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   散りぬれば  恋ふれどしるし  なきものを  今日こそ桜  折らば折りてめ
          
     
  • しるしなき ・・・ 効果がない (験なし)
  
散ってしまえばその後いくら恋しく思っても何の効果もない、それなら今日のうちに桜を折るなら折ってしまおう、という歌。

  この歌の接続助詞「ものを」は順接で 「〜だから」という意味である。逆接として 「〜だけれど」という意味で使われることもあり、その例としては 45番の「くるとあくと 目かれぬものを 梅の花」という貫之の歌などがある。

  "折らば折りてめ" という繰り返しは、少し投げやりな感じだが、74番の惟喬親王の「桜花  散らば散らなむ」などにも通じるものがある。また、 "折りてめ" の 「てめ」の語感が面白いが、これの元は 「て+む」で、「完了の助動詞(つ)の未然形+推量の助動詞(む)」で、 "今日こそ桜" の 「こそ」があるために、「む」が已然形になって 「め」になった結果である。

  「散りぬれば」ではじまる歌としては、435番の遍照の「散りぬれば のちはあくたに なる花を」という歌があり、「しるしがない」ということを詠った歌としては、110番の躬恒の「しるしなき 音をも鳴くかな」という歌や、674番の読人知らずの「ことなしぶとも しるしあらめや」という歌がある。

 
( 2001/10/30 )   
(改 2004/01/20 )   
 
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