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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 紀友則  
564   
   我が宿の  菊の垣根に  置く霜の  消えかへりてぞ  恋しかりける
          
     
  • 消えかへりて ・・・ すっかり消えて
  
庭の菊の垣根に置く霜がすっかり消えるように、我が身が消えるほど恋しく思っている、という歌。
「消えかへる」という言葉は、ニュアンスがとりづらい言葉だが、1002番の貫之の長歌にも 「庭もはだれに 降る雪の なほ消えかへり」として出てくる。

   「かへる」は 「返る」であり、「繰り返し消える」と見る説もあるが、ここでは消えて元の状態に返る、つまり 「すっかり消える」という意味にとっておく。

  「人に知られぬ恋」という基調でこの歌を見ると、 "我が宿の  菊の垣根" は、相手が知らぬ場所であり、相手の冷たさで "置く霜" が、やはり相手に知られぬまま消えてしまうように、この身はまったく気にかけてもらえないけれど、そんな中でもひたすら恋しい、という感じにも見える。

  一つ前の 563番の歌も 「霜」を使ったものだが、そこでは 「笹の葉に置く霜よりも」「我が衣手」が 「さえまさる」としていて、 566番の忠岑の歌では 「雪の下ぎえ」に 「消えて物思ふ」と言っており、関連性が感じられる。また、「菊」と 「霜」との取り合わせは 277番に躬恒の「初霜の 置き惑はせる 白菊の花」という歌がある。

  「恋しかりける」という表現を使った歌の一覧は 991番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/20 )   
(改 2004/02/10 )   
 
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