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       題しらず 読人知らず  
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   木の間より  もりくる月の  影見れば  心づくしの  秋はきにけり
          
     
  • 月の影 ・・・ 月の光
  • 心づくし ・・・ 様々な思いで心をすり減らすこと
  
木の間から漏れてくる月の光を見ると、心をすり減らすような秋がやって来たのだなと思う、という歌。月の光→秋という関連する基本要素があって、前者には 「木の間から漏れてくる」月の光、後者には 「心づくしの」秋、という修飾がついている。それにより月の光は単なる 「明るさ」ではなく、光と影の照明効果であり、秋も単なる 「季節」ではなく、何か過去の記憶と結びついた周期であることを表しているように見える。しかし、歌の中心である 「心づくしの秋」という表現には、それ以上の説明がないため、作者が具体的に何を思っているのかはわからない。

 
       
     
  古今和歌集の中で見るとこの歌の "秋はきにけり" は「きにけり」つながりで 208番の「今朝吹く風に 雁はきにけり」という歌に通じ、そこから 「かり」によって 418番の業平の 「かりくらし」の歌をつかまえて、その歌の最後の 「我はきにけり」で再びこの歌に戻っての三角形を閉じているようにも見える。また 「心づくし」という言葉からは 「身を尽くす」ということを 「澪標」(みをつくし)の駄洒落で言った 567番の藤原興風の「みをつくしとぞ 我はなりぬる」という歌が連想される。

 
( 2001/11/12 )   
(改 2003/11/04 )   
 
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