題しらず | 読人知らず | |||
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"いなほせ鳥" は、秋歌下にある 306番の壬生忠岑の歌にも「いなおほせ鳥の 涙なりけり」とあるが、それがどんな鳥かは不明であるとされる。そのため 「古今伝授」の三鳥の一つとされ、「和歌秘伝鈔」 (1941 飯田季治 畝傍書房) では、「古今伝授」の本文として 「稲負鳥」について次のような説を紹介している。
また、この本文の奥書には1472年の一条兼良の古今三鳥に関する口伝が記されていて、その中で兼良は、どうしても名前を定めなければならない時には 「呼子鳥=ツツドリ」「百千鳥=ウグイス」「稲負鳥=セキレイ」とせよ、ただし本来これらの三鳥は名前があって実体がないところにポイントがあるのであって、呼子鳥は物音を立てるものの総称、百千鳥は春に鳴く鳥の総称、稲負鳥は秋に鳴く鳥の総称と心得て、呼子鳥を猿だと言っても馬鹿にしてはいけない、というようなことを述べている。 こう見ると "いなほせ鳥" はセキレイということで落ち着きそうだが、直感的にはその羽の模様から 「稲負鳥」はスズメであった方がわかりやすい気がする。 さて、この歌の特徴は鳥に鳥を合わせている点にあるが、同じ 「なへに」という言葉を使った 204番の「ひぐらしの 鳴きつるなへに」という歌と並べてみると、やはりこの歌でも 「いなおほせ鳥」は背景効果として扱われていることがわかる。そろそろ秋の田の穂が実りはじめる頃、「いなおほせ鳥」はそれを目当てにしてか朝から騒がしくなり、そうしているうちに秋の風に乗って主役が登場、という感じであろうか。 「なへに」という言葉を使った歌の一覧は 211番の歌のページを、「吹く風」を詠った歌の一覧については 99番の歌のページを参照。 |
( 2001/10/10 ) (改 2004/02/24 ) |
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