これさだのみこの家の歌合せのうた | 紀友則 | |||
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991番の 「斧」の歌や、274番の 「白菊」の歌のように中国の故事を元にしているものがあるが、この歌もその一つである。 「雁のたまづさ」の話は、胡国に捕らわれた漢の蘇武(そぶ)が雁に託して漢王に文を届けたということで、「漢書」の蘇武伝にあるようである。また、詞書ではこの歌は「これさだのみこの家の歌合せのうた」とされているが、現存する「是貞親王家歌合」にはこの歌はなく 「寛平御時后宮歌合」に、 秋風に 初雁がねぞ 響くなる たがたまづさを かけてきつらむ として載っている。 189番の歌をはじめとして古今和歌集の詞書で「これさだのみこの家の歌合せ」と書かれていても現存する 「是貞親王家歌合」にない歌も多いので、この友則の歌もその一つとも考えられるが、「寛平御時后宮歌合」にあるという事実からすると、両方の歌合に出されたというのも(可能性はあるとしても)少し考えづらいので、シンプルに考えれば、これは古今和歌集の詞書の誤記であるように思われる。 「聞こゆなる」と 「響くなる」の違いについては、他にも古今和歌集に採られた時に一部が変わっているものがあるので、それ自体は問題はないが、「聞こゆ」の方に先に慣れていると 「響く」では少し重いように感じる。原型が 「響く」であるとすると、「たまづさ」を持ってきた雁がサイレンのようにそれを知らせる、という雰囲気を伝えたかったのかもしれない。 「秋風」を詠った歌の一覧は 85番の歌のページを、「初雁」が詠った歌の一覧については 735番の歌のページを参照。 「たまづさをかけて来た」という 「かけて」は首あるいは脚に 「掛けて」持ってきたということであろうが、855番の読人知らずの「郭公 かけて音にのみ なくとつげなむ」という歌との関係が少し気になるところではある。その他の歌で 「かく」という言葉が使われている一覧については 483番の歌のページを参照。 |
( 2001/12/03 ) (改 2004/03/11 ) |
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