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- 片糸 ・・・ 縒り合わせる前の状態の糸
- よりかけて ・・・ 縒って掛けて
- 玉の緒 ・・・ 珠をつなぐ紐、あるいは命
片糸をこちらとあちらで撚って掛けても、それが合うことがなければ何を命をつなぐ太い絆と思いましょうか、という歌。お互いが "片糸" で、それぞれに自分の思いだけを相手に伝えても、実際に逢うことがなければ何にもならない、という感じか。
「こなたかなた」という言葉は、379番の良岑秀崇の歌にも使われており、「此方彼方」で 「こちらとあちら」ということだが、「あちらこちらに方々」という意味もあり、そこから "こなたかなたに よりかけて" を 「あれこれと手を尽くして」と見る説もある(本居宣長「古今和歌集遠鏡」:「余材打聞ともに。ニの句の注わろし。これはたゞさま/゛\として心をつくすことをたとへたる也。男女のこなたかなたをたとへたるにはあらず。」)。ただ、やはりこの歌の場合は 「こなたかなた」は自分と相手であった方が自然であるように思われる。
また、「よりかく」という言葉は、恋歌という観点からすれば 「思いを懸ける」ということで、その後ろの "あはずは" で 「思いをかけて−(それでも)逢わない」ということを糸の譬えで表しているものであろう。 「書く」以外の意味の 「かく」という言葉が出てくる歌を整理してみると次の通り。
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