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       題しらず 読人知らず  
211   
   夜を寒み  衣かりがね  鳴くなへに  萩の下葉も  うつろひにけり
          
     
  • なへに ・・・ 〜するにつれて
   
夜が寒いので、衣を借りたいと鳴く雁の声が深まるにつれて、萩の下葉の色も変わってきた、という歌。左注には「このうた、ある人のいはく、柿本の人麿がなりと」とある。

  "衣かりがね 鳴く" の部分は 「衣を借りがねて泣く」と 「雁がねが鳴く」を掛けている。記憶には残りやすいかもしれないが、「夜が寒いので衣を借りようと思ったがそれができずに泣く」というのはやや強引なような気もする。また "夜を寒み" は、直後の駄洒落をまたいで、 "萩の下葉も  うつろひにけり" にも掛かっていると見た方がよさそうである。 「萩」を詠った歌の一覧は 198番の歌のページを参照。

  この歌の他に "なへに" という言葉を使った歌としては、次の三つの歌がある。

 
204   
   ひぐらしの  鳴きつるなへに   日は暮れぬと  思ふは山の  かげにぞありける
     
208   
   我が門に  いなおほせ鳥の  鳴くなへに   今朝吹く風に  雁はきにけり
     
985   
   わび人の  住むべき宿と  見るなへに   嘆きくははる  琴の音ぞする
     
        これをもう一度まとめておくと次の通り。

 
     
204番    ひぐらしの  鳴きつるなへに  読人知らず
208番    いなおほせ鳥の  鳴くなへに  読人知らず
211番    衣かりがね  鳴くなへに  読人知らず
985番    わび人の  住むべき宿と 見るなへに  良岑宗貞


 
        また 「夜を寒み」という言葉を使った歌としては他に 416番と 663番に二つの躬恒の歌がある。 「〜を+形容詞の語幹+み」というかたちを持った歌については 497番の歌のページを、また、「うつろふ」という言葉を使った歌の一覧については 45番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/10 )   
(改 2004/02/09 )   
 
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