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       石山にまうでける時、音羽山のもみぢを見てよめる 紀貫之  
256   
   秋風の  吹きにし日より  音羽山  峰の梢も  色づきにけり
          
        詞書にある 「石山」とは、現在の滋賀県大津市石山町にある石山寺のこと。

  歌の意味は言葉通りで、
秋風の吹いたその日から、音羽山の峰の梢も色づきはじめたのだな、ということ。 「秋風の 吹きにし日より」という、まったく同じフレーズではじまる歌に、173番の読人知らずの歌があり、「色づきにけり」という言葉を使った歌には次のようなものがある。

 
     
256番    音羽山  峰の梢も 色づきにけり  紀貫之
260番    もる山は  下葉残らず 色づきにけり  紀貫之
1077番    と山なる  まさきのかづら 色づきにけり  読人知らず


 
        詞書の「石山にまうでける時」というのは、石山寺に参詣する途中で、ということだろうが、音羽山は石山寺の西にあるので、一つ前の「西の方にさせりける枝のもみぢはじめたりけるを」という詞書を持つ 255番の藤原勝臣(かちおむ)の歌と合わせて置いたとも考えられなくもない。

  また、貫之の歌ということもあってか、「音羽山」の音に 「風の音」が掛かっていると解釈されることもある。本居宣長「古今和歌集遠鏡」では、この歌の訳として 「
秋ノタチソメタ日カラシテ風ノ音モカハツテキタガ  今日見レバ此ノ山ノ木ドモヽソロ/\色ガツイテキタワイ」としている。「古今和歌集遠鏡」の端書(=序)で「雲のゐる遠き梢もとほ鏡うつせばこゝにみねのもみぢ葉」というヘタ歌を披露している宣長でもあるので、聴覚として 「音羽山」に 「音」、視覚として 「峰」に 「見」を感じていたのかもしれない。 「秋風」を詠った歌の一覧は 85番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/05 )   
(改 2004/03/11 )   
 
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