石山にまうでける時、音羽山のもみぢを見てよめる | 紀貫之 | |||
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詞書にある 「石山」とは、現在の滋賀県大津市石山町にある石山寺のこと。 歌の意味は言葉通りで、秋風の吹いたその日から、音羽山の峰の梢も色づきはじめたのだな、ということ。 「秋風の 吹きにし日より」という、まったく同じフレーズではじまる歌に、173番の読人知らずの歌があり、「色づきにけり」という言葉を使った歌には次のようなものがある。 |
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詞書の「石山にまうでける時」というのは、石山寺に参詣する途中で、ということだろうが、音羽山は石山寺の西にあるので、一つ前の「西の方にさせりける枝のもみぢはじめたりけるを」という詞書を持つ 255番の藤原勝臣(かちおむ)の歌と合わせて置いたとも考えられなくもない。 また、貫之の歌ということもあってか、「音羽山」の音に 「風の音」が掛かっていると解釈されることもある。本居宣長「古今和歌集遠鏡」では、この歌の訳として 「秋ノタチソメタ日カラシテ風ノ音モカハツテキタガ 今日見レバ此ノ山ノ木ドモヽソロ/\色ガツイテキタワイ」としている。「古今和歌集遠鏡」の端書(=序)で「雲のゐる遠き梢もとほ鏡うつせばこゝにみねのもみぢ葉」というヘタ歌を披露している宣長でもあるので、聴覚として 「音羽山」に 「音」、視覚として 「峰」に 「見」を感じていたのかもしれない。 「秋風」を詠った歌の一覧は 85番の歌のページを参照。 |
( 2001/12/05 ) (改 2004/03/11 ) |
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