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       仁和寺に菊の花めしける時に、うたそへてたてまつれ、と仰せられければ、よみてたてまつりける 平貞文  
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   秋をおきて  時こそありけれ  菊の花  うつろふからに  色のまされば
          
     
  • おきて ・・・ 除いて
  • からに ・・・ 〜につれて
  詞書にある 「仁和寺」とは現在も京都府京都市右京区御室大内(おむろおおうち)にある仁和寺。そこに 「花めし」たのは 899年にこの寺で出家した宇多法皇であり、この詞書の感じからは法皇がその寺に 904年に御室(おむろ)を建てて移り住んだ後のように思える。つまり詞書の意味は、法皇がそこに菊の花を集めた時、同時に歌も付けて出すようにという意向があったので、貞文がこの歌をつけて自分の家の菊を献上したということである。

  歌の内容は、
秋以外にもその盛りがある菊の花です、変色してゆくにつれて色が増してゆきますから、ということ。 "うつろふからに 色のまされば" ということから、貞文が白菊を献上したことがわかる。 「うつろふ」という言葉を使った歌の一覧については 45番の歌のページを参照。

  ただ、 "秋をおきて" (=秋以外に)と言っているニュアンスがわかりづらいが、秋の花の盛りを過ぎてもただ枯れるだけではなくその色の変化を楽しめるこの菊の花でございます、ということなのだろう。あるいは、菊の提出が遅れての言い訳のような感じもする。

  「からに」という言葉を使った歌の一覧は 249番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/06 )   
(改 2004/03/08 )   
 
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