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       人の家なりける菊の花をうつしうゑたりけるをよめる 紀貫之  
280   
   咲きそめし  宿しかはれば  菊の花  色さへにこそ  うつろひにけれ
          
        詞書は「人の家にあった菊の花を移し植えたのを詠んだ」歌、ということで、咲きはじめた所から移ったので、色までも変わったのだな、という歌。詞書に「菊の花を」とあるので、花がついた状態で移し植えたものだろう。

  「かはる−うつろふ」を合わせただけの凡庸な感じの歌だが、撰者たちがこの歌を菊の歌群の最後に置いたということは、 "咲きそめし" という初句で開花の時期を示し、"うつろひにけれ" という終わりの句で、花の終わりをしめくくるという菊の花の存続時間を一つの歌に込めたという点を見てのこととも考えられる。

  「さへに」という言葉を使った歌には次のようなものがある。 「さへ」を使った歌すべての一覧は 
122番の歌のページを参照。

 
     
82番    見る我さへに  しづ心なし  紀貫之
104番    心さへに  うつりける  凡河内躬恒
280番    色さへにこそ  うつろひにけれ  紀貫之
342番    見る影さへに  くれぬと思へば  紀貫之
657番    夢ぢをさへに  人はとがめじ  小野小町
782番    言の葉さへに  うつろひにけり  小野小町


 
        また、「うつろふ」という言葉を使った歌の一覧については 45番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/06 )   
(改 2004/02/17 )   
 
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