Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻五

       これさだのみこの家の歌合せのうた 文屋康秀  
249   
   吹くからに  秋の草木の  しをるれば  むべ山風を  嵐と言ふらむ
          
     
  • むべ ・・・ 本当に、まさしく
  
それが吹けばたちまち秋の草木が萎れるので、なるほど山風を嵐と言うのか、という歌で、「嵐=山+風」という文字のつくりを含んでいる。 363番の貫之の「山下風に 花ぞ散りける」という歌も、文字のかたちから見れば、「山の下に風」というように見える。 「山風」を詠った歌の一覧は 394番の歌のページを参照。また、似たような歌に「梅=木+毎」を使った 337番の友則の「雪降れば  木ごとに花ぞ 咲きにける」という冬歌がある。

  この歌では前半の導きの部分がうまく機能し、全体としての歌の姿を整えている。こうした言葉遊びを含む歌は、そのバランスとどれだけ印象深いかということが大切だと思われる。

  他に 「吹くからに」という言葉を使った歌としては、藤原定国の四十の賀の時の屏風絵に付けられた次の歌があり、「むべ」という言葉は雑歌上の読人知らずの歌に見ることができる。

 
360   
   住の江の  松を秋風  吹くからに   声うちそふる  沖つ白浪
     
898   
   とどめあへず  むべも 年とは  いはれけり  しかもつれなく  すぐる齢か
     
        「〜するとたちまち/〜につれて」という意味の 「からに」という言葉を使った歌には次のようなものがある。

 
     
185番    おほかたの  秋くるからに 我が身こそ  読人知らず
249番    吹くからに  秋の草木の しをるれば  文屋康秀
279番    菊の花  うつろふからに 色のまされば  平貞文
348番    つくからに  千歳の坂も 越えぬべらなり  僧正遍照
360番    吹くからに  声うちそふる 沖つ白浪  凡河内躬恒
638番    明けぬとて  いまはの心 つくからに  藤原国経
718番    忘れなむと  思ふ心の つくからに  読人知らず


 
( 2001/08/08 )   
(改 2004/03/11 )   
 
前歌    戻る    次歌