Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻七

       もとやすのみこの、七十の賀のうしろの屏風によみてかきける 紀貫之  
352   
   春くれば  宿にまづ咲く  梅の花  君が千歳の  かざしとぞ見る
          
     
  • かざし ・・・ 綺麗な花などを折って髪に挿すこと (挿頭)
  詞書にある 「もとやすのみこ」(=本康親王)は仁明天皇の皇子。没年は901年とされるが、没時の年齢はわからないので、その七十の賀がいつものであるかは不明。ただ仁明天皇の第三皇子とされる光孝天皇の生年は 830年である。光孝天皇は 887年に亡くなっているが、生きていれば 
901年で七十二歳である。母親は違っても本康親王が光孝天皇より年上とは考えられないとすると、その生年は 830〜832年の間、よって七十の賀は 899〜901年の間であろう。

  
春になれば家の庭にまず咲く梅の花、それはあなたの千歳へのお祝いの飾りのようです、という歌。詞書には「屏風」と書いてあるだけなので、そこに絵があったかどうかはわからないが、老いて小さくなった親王の頭越しに梅の枝が見えるような歌である。また、この歌の出だしは「春されば 
野辺にまづ咲く 見れどあかぬ花」という 1008番の 「旋頭歌」と似ている。

  「とぞ見る」という表現を使った歌の一覧は 301番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/18 )   
(改 2004/03/09 )   
 
前歌    戻る    次歌