Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十七

       題しらず 読人知らず  
911   
   わたつみの  かざしにさせる  白妙の  浪もてゆへる  淡路島山
          
     
  • わたつみ ・・・ 海の神
  • かざし ・・・ 綺麗な花などを折って髪に挿すこと (挿頭)
  • 白妙 ・・・ 白い色
  • ゆへる ・・・ 髪を結っている
  歌の意味は、
海神が、かざしとする白い波で、髪を結って飾っている淡路島よ、ということ。動きがあって、美しいイメージの歌である。 "わたつみ" は、海自体を指すこともあるが、ここでは本来の海を神格化した 「わた(海)+つ(の)+み(神霊)」と解釈されるのが一般的である。 "淡路島山" 
は淡路島を山と見たものと言われる。

  「ゆふ」という言葉には 「結ぶ・めぐらす・巻く」という意味があり、 1070番の 「ふるき大和舞のうた」でも 「しもとゆふ かづらき山に」というように使われている。この歌の場合も、本居宣長が「古今和歌集遠鏡」の中で 「
マツ白ナ浪デ グルリトトリマハシテ テウド帯ヲシタヤウナ」と訳しているように、「白い波を帯のようにめぐらせている」と見る説もあるが、その前で 「白妙の浪」を 「海神が挿すかざし」としているので、それをぐるっとめぐらす、というのは、まるで海神の頭の上に淡路島が乗っていて、海神の頭飾りが淡路島の腰巻になっているようで、どうもイメージが悪い。

  そこで、ここでは 「海神の頭飾りをちょっと借りて、それで髪をまとめている淡路島」という見立てと見ておきたい。他に "かざし" という言葉を使った歌には、次の二つの貫之の歌がある。

 
276   
   秋の菊  匂ふかぎりは  かざしてむ   花より先と  知らぬ我が身を
     
352   
   春くれば  宿にまづ咲く  梅の花  君が千歳の  かざし とぞ見る
     

( 2001/10/18 )   
(改 2004/02/02 )   
 
前歌    戻る    次歌