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三句目の 「命」は、自分の命とも相手の命ともとれる。普通に考えれば 「貴方が行った後まで私の命があるなら」ということだろうが、直前の命令形からそのまま読めば「試みよ、貴方の命があるなら」と言っているようにも見える。問題は後半に持ち越されるが、この時点でも、"今こころみよ" と "命あらば" のズレが気になる。
そして、"我や忘るる 人やとはぬと" の部分であるが、そのまま読めば「私が忘れるか、貴方が訪れないか」ということになる。旅行く人に 「貴方が訪れないか」と言うのもおかしな話で、ここにおいて読んでいる方が 「えぞ知らぬ」状態になってしまう。
考えるに、これは 645番の「君やこし 我や行きけむ 思ほえず」という 「斎宮なりける人」の歌をベースにしたものではないだろうか。つまり、「昨日の夜、私たちは本当に逢ったのでしょうか、悲しみに私の命がまだ消されていないなら、もう一度逢ってどちらか試してください、私が忘れてしまったのか、本当は貴方は来なかったのか」という感じか。
なお、「紀のむねさだ」とこの歌については「古今集人物人事考」 (2000 山下道代 風間書房 ISBN 4-7599-1201-0) に「「きのむねさだ」をめぐって」という論考がある。
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