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       さがりごけ 高向利春  
450   
   花の色は  ただひとさかり  濃けれども  返す返すぞ  露は染めける
          
        高向利春(たかむこのとしはる)は生没年不詳。 914年従五位下。古今和歌集に採られているのはこの物名の歌一つのみ。

  「ただひと
サカリ コケれども」に題の 「さがりごけ」が入れられている。 「さがりごけ」とは今のサルオガセのことで、松の木などから白い髭のように垂れ下がる地衣類(地衣類とは、樹木や岩石などに付着して生息する菌類と藻類の共生体であり、共生体とは、見た目には一つにまとまっているが、その中では複数の生物がお互いに作用しあって生命活動を行なっているものを指す)である。

  歌の意味は、
花の色はただ一時鮮やかな姿を見せるが、それは繰り返し露が染めているからだ、ということ。白い髭の老人が努力の大切さを諭しているような感じの歌である。同じような 「花−濃い−露−染める」という言葉を使った物名の歌に、次の矢田部名実(やたべのなざね)の 「けにごし」の歌がある。

 
444   
   うちつ けに    こし とや花の  色を見む  置く白露の  染むるばかりを
     
        また、この歌で使われている "返す返すぞ" という言葉は、515番の読人知らずの恋歌の中でも「返す返すぞ 人は恋しき」として使われており、902番の在原棟梁の「かへるがへるも 老いにけるかな」という歌も思い出させる。

 
( 2001/10/04 )   
(改 2004/02/01 )   
 
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