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「ゆめになにカハ ナグサまむ」に物名として詠み込まれている 「かはな草」とは、藻の一種の川もずくとも水苔とも言われている。ただ、何を指すかがはっきりとわからないため、いわゆる 「古今伝授」の 「三木一草」として伝承されていた。 「三木一草」とは、をかたまの 消ゆと見つらむ」の歌
めどの木 ・・・ 445番の文屋康秀の「花の木に あらざらめども」の歌
けづり花 ・・・ 上の歌の詞書
かはな草 ・・・ この歌
であり、「和歌秘伝鈔」 (1941 飯田季治 畝傍書房) では、「古今伝授」の本文として 「かはな草」について次のような説を紹介している。
- かはな草の 「かはな」は 「川菜」ではなく 「河花」の意味である。
- 「かはな」だけでは言いにくいので、それに草をつけて、かはな草と言ったのである。
- かはな草は川苔のことではなく、実は河骨(こうほね:スイレン科の多年草)のことである。
- 蓮(はす)を別とすれば、水草の中で爽やかなものといえば河骨をおいて他にはない。
- かはな草が河骨であることは京極黄門(=藤原定家)の説であり、これは秘伝である。
そしてこの本文の評釈として飯田氏は、誰が何と言おうと 「かはな草」は 「倭名抄」にある通り、水苔のことである、と述べている。
さて、この歌の意味は、夢でいくら姿を見ようと心がなぐさめられるものではない、現実に逢ってさえ満足することがないのに、ということで、429番の深養父の 「からももの花」の物名の歌と同じく、恋歌の味付けがされている。
「あかぬ心」を詠ったものとしては、賀歌ではあるが在原滋春に次の歌がある。
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