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       題しらず 読人知らず  
515   
   唐衣  日も夕暮れに  なる時は  返す返すぞ  人は恋しき
          
        日も傾き夕暮れになる時は、繰り返しあの人が恋しい、という歌。衣の縁語として 「紐結ふ」を 
"日も夕" に掛け、衣をたたむ時に折り返すということを、 "返す返す" に掛けている。

  歌全体としてはそれほど印象に残らないが、この歌の "唐衣 日も夕暮れに なる時は" という縁語・掛詞には好感が持てる。品のよい駄洒落という感じである。貫之はこれをとって、

    みそぎする 河の瀬みれば 唐衣 日もゆふぐれに 浪ぞたちける

という歌を作っており、新古今和歌集巻三284に採られている。

  その他の歌で 「唐衣−紐」を使った歌としては、808番の因幡の「唐衣 思ひ知らずも とくる紐かな」という歌がある。 「唐衣」を使った歌の一覧は 572番の歌のページを参照。

  また、繰り返しという意味での "返す返す" という言葉は、450番の高向利春(たかむこのとしはる)の 「さがりごけ」の物名の歌にも「返す返すぞ 露は染めける」とあり、「衣を返す」ということでは  171番の読人知らずの「我が背子が 衣の裾を 吹き返し」という歌や 554番の小野小町の「夜の衣を 返してぞきる」という歌がある。

 
( 2001/10/29 )   
(改 2004/02/27 )   
 
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