右近のむまばのひをりの日、むかひにたてたりける車のしたすだれより女の顔のほのかに見えければ、よんでつかはしける | 在原業平 | |||
476 |
|
歌の意味は、見たとも言えず、見ないとも言えない人が恋しくて、今日はただ、訳もわからないまま物思いをして過ごそうかと思います、ということ。 この歌には次のような返しがついている。 |
477 |
|
||||||
古今和歌集の恋歌は一から五まで三百六十首あるが、返しを持つものは上記のものを含めて九つしかない。集全体でも二十程度なので比率としては少なくはないが、もっとあってもよいような気がする。これは採るに足るものが少なかったためか、仮名序でいうところの 「あだなる歌、はかなき言」をむやみに採用しないという撰者たちの方針であったのか、どちらなのかはわからない。 また、この歌で使われている "ながめくらさむ" が同じ業平の次の歌の中で 「ながめくらしつ」として出てくるが、そちらは 「眺め−長雨(ながめ)」と掛けて、よりけだるい雰囲気を醸し出しており、また別の角度からの 「ながめ」を見せている。 |
616 |
|
|||||
「恋しくは」という言葉を使った歌の一覧は 285番、「あやなし」という言葉を使った歌の一覧は 477番、「ながめ」という言葉を使った歌の一覧は 113番の歌のページを参照。 |
( 2001/11/05 ) (改 2004/02/23 ) |
前歌 戻る 次歌 |