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       題しらず 読人知らず  
285   
   恋しくは  見てもしのばむ  もみぢ葉を  吹きな散らしそ  山おろしの風
          
        恋しくなった時には、それを見てでも偲ぼうと思うのだから、山おろしの風は紅葉を吹き散らすな、という歌。  何を "しのばむ" と言っているのかわかりづらいが、「紅葉の盛りの季節を」と見ておく。800番の歌に「花をばひとり 見てやしのばむ」という歌があり、その対象を恋人とする説(「古今和歌集全評釈  補訂版 」 (1987 竹岡正夫 右文書院 ISBN 4-8421-9605-X) )もある。

  また、 "吹きな散らしそ" としている紅葉が、枝に残った紅葉なのか、既に落ちてしまっている紅葉なのかもわかりづらいが、「紅葉という存在を」と見て、両方を指していると見ておきたい。すべて吹き散らして冬に向けての大掃除をしようとする風に 「何でそんなことをするのだ」と言っているような感じか。

  "恋しくは" は 「恋しくば」とも書かれ、古今和歌集の中では次のような歌で使われている。

 
     
285番    恋しくは  見てもしのばむ  読人知らず
476番    見もせぬ人の  恋しくは  在原業平
652番    恋しくは  したにを思へ  読人知らず
982番    恋しくは  とぶらひきませ  読人知らず


 
        「しのぶ」という言葉を使った歌の一覧は 505番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/06 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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