Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十一

       題しらず 読人知らず  
528   
   恋すれば  我が身は影と  なりにけり  さりとて人に  そはぬものゆゑ
          
     
  • そはぬものゆゑ ・・・ 寄り添えるものではないが
  
恋をしてこの身は影のようになってしまった、だからといってあの人の影となって寄り添えるわけでもないけれど、という歌。 "我が身は影と  なりにけり" というのは、523番の歌に「人を思ふ 心は我に あらねばや」とあるように、相手のことばかりを考え、自我というものが薄れてしまった状態と考えられる。 523番の歌では 「心」を 「知られざるらむ」と言い、この歌では 「身」について "そはぬものゆゑ" と言っていて、どちらも第三者のような口調である点も似ている。

  「ものゆゑ」はここでは 「〜だけれど」という逆接を表している。 「ものゆゑ」という言葉を使った歌の一覧は 100番の歌のページを参照。

  「人の影になる」という歌としては、他に恋歌三と恋歌四に一首づつ次のような歌がある。

 
619   
   よるべなみ  身をこそ遠く  へだてつれ  心は君が    影となりにき  
     
728   
   曇り日の  影としなれる   我なれば  目にこそ見えね  身をば離れず  
     

( 2001/09/05 )   
(改 2004/01/16 )   
 
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