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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 紀友則  
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   夕されば  蛍よりけに  もゆれども  光見ねばや  人のつれなき
          
     
  • 夕されば ・・・ 夕方になると
  • けに ・・・ いっそう
  
夕方になると、自分の思いは蛍より燃えているのに、光が見えないのか、あの人は素っ気ない、という歌。 "光見ねばや" の 「見ねばや」は 「見+ね+ば+や」で、「見」は 「見る」の未然形で 
「ね」は打消しの助動詞「ず」の已然形。 「見る」は自動詞なので、その主語は 「つれない相手」である。普通ならば 「光が出ないためか」と言うところを 「あの人が光を見ないためか」としているところに少しひっかかりを感じる。逆に言えば 「この燃える思いを知れば、冷たい態度ではいられなくなるはずだ」ということで、これもやはり 「人知れぬ恋」の歌ということであろう。

  ちなみに現存する 「寛平御時后宮歌合」では、「もゆるとも 光見えねば 人つれなき」となっている。これだと確かに意味がわかりやすいが、先に古今和歌集でのかたちを見た後では、何か物足らず平坦な感じを受ける。

  「夕されば」という言葉を使った他の歌については、317番の歌のページを、「つれなき人」を使った歌の一覧については、486番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/03 )   
(改 2003/12/25 )   
 
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