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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 紀友則  
563   
   笹の葉に  置く霜よりも  ひとり寝る  我が衣手ぞ  さえまさりける
          
     
  • 衣手 ・・・ 袖
  • さえ ・・・ 冷えて (冴ゆ)
  
笹の葉の上に降る霜よりも、ひとり寝をする自分の衣の袖は冷たさが優っている、という歌で、涙が凍りつくほど寂しい、あるいは相手の冷たさが身にしみる、という意味であろう。

  555番の素性法師の「秋風の 身に寒ければ」という歌の延長のように見える。また、秋歌上には 188番の「ひとり寝る 床は草葉に あらねども」という歌があり、そこでの 「露けかりけり」とこの歌の "置く霜よりも" というフレーズを比較して見ることもできる。

  「笹の葉」と 「霜」ということでは、663番の躬恒の歌に「笹の葉に 置く初霜の 夜を寒み」とある他、読人知らずの次の誹諧歌でも「笹の葉−霜−ひとり寝」が詠まれている。

 
1047   
   さかしらに  夏は人まね  笹の葉の   さやぐ霜夜を  我がひとり寝る  
     
        ただし、上記の歌の 「さやぐ」という言葉は、「サヤサヤと音を立てる」ということで、この歌の 「さえまさる」の 「冴え」とは意味が別。また、「冴ゆ」は月などが澄み切っているという場合にも使われるが、 169番の藤原敏行の歌などで使われている 「さやか」は 「清か」(=はっきりしている)で基本的には別の言葉である。 「ひとり寝」を詠った歌の一覧は 188番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/26 )   
(改 2004/02/18 )   
 
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