題しらず | 読人知らず | |||
621 |
|
この歌には「このうたは、ある人のいはく、柿本の人麿がうたなり」という左注がついている。 逢わない夜が降る雪のように積もり重なってゆくとするなら、私もそれと共に消えてしまうに違いありません、という歌。 「雪」と消えるイメージは微妙だが、"あはぬ夜" と "降る白雪" という言葉の組み合わせが美しい歌である。 雪が降り、積もり、消える、という歌としては、328番に「白雪の 降りてつもれる 山里は」という歌がある。それと同じでこの歌の 「消ゆ」も積もった雪の中に消える、ということではなく、雪が溶けて消えるという意味であると思われる。 ちなみに "けぬべき"の 「け」は 「消ゆ」の連用形である 「きえ」が一字になったもの。また、この歌からは 978番の躬恒の「君が思ひ 雪とつもらば たのまれず」という歌も思い出される。 「さへ」を使った歌の一覧は 122番の歌のページを参照。 |
( 2001/12/05 ) (改 2004/02/10 ) |
前歌 戻る 次歌 |