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       題しらず 読人知らず  
620   
   いたづらに  行きてはきぬる  ものゆゑに  見まくほしさに  いざなはれつつ
          
     
  • 見まくほしさ ・・・ 逢いたい気持ち
  • いざなはれ ・・・ 連れて行かれて
  
ただ無意味に、行っては帰って来るのだけれど、逢いたさ見たさの気持ちに押されて、どうしてもやめられない、という歌。この歌の "ものゆゑに" は、「〜だけれども」という逆接の意味である。

  「ものゆゑ」を使った歌の一覧については 100番の歌のページを参照。 "見まくほしさ" とは 「見まく+欲し+さ」で 「見まく」は 「見+まく」と分解され、「まく」は 「〜こと」を意味する連語である。(さらに 「まく」は推量の助動詞「む」の古い未然形である 「ま」と上代の準体助詞の 「く」に分けられると言われる)。 「見まくほし」が使われている歌には 1029番の紀有朋の他に、次のようなものがある。

 
752   
   見てもまた  またも 見まくの   ほしければ   なるるを人は  いとふべらなり
     
900   
   老いぬれば  さらぬ別れも  ありと言へば  いよいよ 見まく   ほしき 君かな
     
912   
   わたの原  寄せくる浪の  しばしばも  見まくのほしき   玉津島かも
     
        これをまとめ直してみると次の通り。

 
     
620番    見まくほしさに  いざなはれつつ  読人知らず
752番    またも見まくの  ほしければ  読人知らず
900番    いよいよ見まく  ほしき君かな  業平朝臣母
912番    見まくのほしき  玉津島かも  読人知らず
1029番    あひ見まく  数なく ありながら  紀有朋


 
        その他、この 「まく」が使われている歌としては、864番の「唐錦 たたまく惜しき ものにぞありける」という歌と、981番の「菅原や 伏見の里の 荒れまくも惜し」という歌がある。

 
( 2001/09/06 )   
(改 2004/02/09 )   
 
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