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- かねてより ・・・ (何かが起こる)前から
- まだき ・・・ 早くも
風が吹くより先に浪が立つようなものか、逢ってもいないのに早くも噂になっているようだ、という歌。火のない所に煙が立ったというような意味か。
普通は 「風の音」を噂に譬えるが、この歌では 「風−噂」では意味が通らない。風が吹いて浪が騒ぐ、という物事の因果関係の譬えに使っているだけである。また、この歌には 「なき名」という言葉は使われていないが、事実がなくて立つ噂ということで 「なき名」の歌と考えられ、この後に四首続く 「なき名」の歌のはじまりと見ることができる。
ただ、見方によってはこの歌は一つ前の 626番の在原元方の「あふことの なぎさにしよる 浪なれば」という歌に対する返しに見立てて置かれたものとも考えられる。つまり、元方の歌が 「逢えなくて波のように恨みて(=浦見て)立ち返った(=帰った)」と言っているのを、逢ってもいないのに「恨みて立ち返る」というあなたは、風より先に起きた波のようなもの、とあしらっている女性の歌のようにも見える。その場合は "まだき立つらむ" が指しているのは 「なき名」でないということになるが、その解釈はあまり直感的にわかりやすいものとはいえない。
恋歌ではないが、次の布留今道(ふるのいまみち)の歌も風と波を使っていて、どことなく雰囲気がこの歌と似ている。
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