題しらず | 読人知らず | |||
774 |
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今はもう来るまい、と思いながらも、そのことを忘れては、つい待ってしまうという習慣がまだ止まないことです、という歌。 「こめやとは 思ふものから」という 772番の読人知らずの歌とよく似た内容だが、 "忘れつつ" という言葉の挿み方が効いている。ここでは 「もう来ない」ということを、つい忘れてしまうということだが、「忘る」という言葉からは、「恋しきことに もの忘れせで」という 734番の貫之の歌が思い出される。 "思ふものから" の 「ものから」は、ここでは 「〜だけれども」という逆接の意味である。 「ものから」という言葉を使った歌の一覧については、147番の歌のページを参照。 「待たるる」の 「るる」は、自発を表す助動詞「る」の連体形である。 "まだもやまぬか" の最後の終助詞の 「か」はここでは疑問ではなく、詠嘆を表している。この詠嘆・感動の「か」は 27番の遍照の歌の「珠にもぬける 春の柳か」、601番の忠岑の歌の「絶えてつれなき 君が心か」など、多くの歌で使われている。 |
( 2001/11/26 ) (改 2004/01/18 ) |
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