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       題しらず 読人知らず  
775   
   月夜には  来ぬ人待たる  かきくもり  雨も降らなむ  わびつつも寝む
          
        こんな月夜の晩は、来ないとわかっている人でも待ってしまう、空がかき曇り、いっそ雨でも降ってほしい、そうすればあきらめがついて悲しい思いをしながらも寝ることができるのに、という歌。

  月夜に相手を待つという歌は、692番の読人知らずの「月夜よし 夜よしと人に つげやらば」という歌などがあり、402番の読人知らずの「かきくらし ことはふらなむ」という離別歌は、「かきくらし」(=暗くなって)ではあるが、この歌の "かきくもり 雨も降らなむ" という部分と似た表現である。

  "待たる" の 「る」は自発の助動詞であり、この歌は一つ前の次の読人知らずの歌からこの 「待たるる」気持ちつながりで置かれていると見ることができる。

 
774   
   今はこじと  思ふものから  忘れつつ  待たるることの   まだもやまぬか
     
        「わぶ」という言葉を使った歌の一覧は 937番の歌のページを参照。

  また、この歌が 「月を雲が隠して雨も降って欲しい」と言っていることについて、
「古今和歌集全評釈(中)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-205980-0)では「男はずっとやって来ないのだが、月が明るい夜には外出しやすいから、ひょっとしてら来てくださるのではないかと思ってしまうのである。」と解いている。 705番の歌の「あめの降りけるをなむ見わづらひ侍る」という詞書などを見ると、なるほどと納得される解釈である。

 
( 2001/11/20 )   
(改 2004/01/19 )   
 
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