題しらず | 読人知らず | |||
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私だけが、物憂く悲しいと泣いて苦しむのでしょうか、あなたの心が花と散ってしまったので、という歌。 422番の藤原敏行の「うくひすとのみ 鳥の鳴くらむ」という物名の歌との違いが気になる。 「世を憂」というために 「世をう〜」という表現を使うのは一つの型であり、次のような歌で使われている。似たような表現で 「身をう〜」というものについては 806番の歌のページを参照。 |
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つまり同じ 「うぐひすと」でも、敏行の物名が 「「憂く干ず(=嫌だ、乾かない)」とのみ...」と鳥のセリフとしているのに対し、この歌では 「世を憂−の−うぐひす−のように」という感じだろうか。ただこの歌の場合も上記のような例にとらわれずに、歌単体で見れば 「「物憂く思って涙が乾かない」と泣く」と言っているようにも見える。 「のみや」という言葉を使った歌の一覧は 55番の歌のページを参照。 また、"人の心" は恋の相手を指し、それに対して "我のみや" と言っていると見れば、この歌の 「世」とは、本居宣長が「古今和歌集遠鏡」でこの歌について 「世は男女の間をいふ」と言っている通り、二人の仲のことを指していると考えられる。 「人の心」という言葉を使った歌の一覧については 651番の歌のページを参照。 「動詞+わぶ」というかたちが使われている歌の一覧は 152番の歌のページを参照。 |
( 2001/11/21 ) (改 2004/03/10 ) |
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