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       題しらず 三国町  
152   
   やよやまて  山郭公  ことづてむ  我れ世の中に  住みわびぬとよ
          
     
  • やよや ・・・ 呼びかけの言葉
  
ちょっと待って、山に帰るホトトギスよ、お前に言伝を頼みましょう、私はもう世の中に住むのがいやになったと、という歌で、山にいる人に言伝を頼んでいるものである。 三国町(みくにのまち)は生没年不明。仁明天皇の更衣で、769番の歌の作者の貞登(さだののぼる)の母。

  まるで別荘のパンフレットの謳い文句のような 944番の読人知らずの「山里は もののわびしき ことこそあれ」という歌などを見ると、世の中が嫌になって山に入りたい、出家したいと思う人は多かったのであろう。148番の「唐紅の  ふりいでてぞ鳴く」という歌などが恋歌としてもおかしくないように、この歌は雑歌下の厭世の歌群にまじっていてもおかしくない。

  「ことづて」という言葉を使った他の歌には、742番の寵(うつく)の「人はくれども ことづてもなし」という歌と、次のゴツゴツした感じの 「かひうた」がある。

 
1098   
   甲斐がねを  ねこし山こし  吹く風を  人にもがもや  ことづて やらむ
     
        また、この歌では 「住む」と 「侘ぶ(わぶ)」がつながって 「住みわぶ」というかたちになっており、似たような 「動詞+わぶ」という使われ方をしているものに次のような歌がある。このうち 539番の 「うちわぶ」の 「うち」は 「打つ」の連用形からきた接頭語であり、他のものとは少し異なるが一覧に入れておいた。

 
     
152番    我れ世の中に  住みわびぬとよ  三国町
423番    時すぎぬれや  待ちわび  藤原敏行
539番    うちわび  よばはむ声に 山彦の  読人知らず
558番    恋わび  うちぬるなかに 行きかよふ  藤原敏行
798番    世をうぐひすと  なきわび  読人知らず


 
        他にも 「わぶ」「わびし」「わび人」「わびしら」のようなものもあり、それらについては以下のページを参照。
  • わぶ ・・・ 937番
  • わびし ・・・ 8番
  • わび人 ・・・ 292番
  • わびしら ・・・ 451番
 
( 2001/10/30 )   
(改 2004/03/11 )   
 
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