朱雀院のみかど、布引の滝御覧ぜむとてふみづきの七日の日、おはしましてありける時に、さぶらふ人々にうたよませたまひけるによめる | 橘長盛 | |||
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詞書の意味は、「朱雀院のみかど(=宇多天皇)が布引の滝をご覧になろうと、七月七日にいらっしゃった時に、仕える者たちに歌を詠ませた時に詠んだ」歌ということ。 「布引の滝」は 922番/ 923番の在原行平/業平の歌の詞書にもあり、現在の兵庫県神戸市中央区葺合(ふきあい)町にある滝。橘長盛(たちばなのながもり)は生没年不詳、923年従五位下。古今和歌集にはこの一首のみが採られている。 歌の意味は、持ち主のないままにさらされているこの布を、心からの気持ちとして今日は織姫に貸しましょうか、ということ。 「七夕にかす」という表現は 180番の躬恒の歌に「七夕に かしつる糸の うちはへて」というものがあり、どちらも 「かす」は 「供える」という意味と考えられている。 「まし」は反実仮想の助動詞で、「まし」が使われている歌の一覧は 46番の歌のページを参照。 この歌のの 「主なくて さらせる布」という表現は、241番の「主知らぬ 香こそ匂へれ 秋の野に」という素性法師のフジバカマの歌を思い出させる。 |
( 2001/12/04 ) (改 2004/02/26 ) |
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