Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十九

       題しらず 読人知らず  
1009   
   初瀬川  ふる川の辺に  ふたもとある杉  年をへて  またもあひ見む  ふたもとある杉
          
     
  • ふたもと ・・・ 二本
  
初瀬川と布留川の出合う岸辺に生えている二本の杉、年月を経て、またここで逢いましょう、という歌。 "初瀬川" は現在で言うと、奈良県桜井市初瀬の長谷寺の付近を流れる川で、奈良県天理市布留町の石上神宮あたりを流れる "ふる川" (布留川)と奈良県磯城(しき)郡田原本町大字八田あたりで合流する。

  初瀬川と布留川、二本の杉、そして "ふたもとある杉" の繰り返し、というように 「二」ということがキーワードになっている歌である。 "年をへて" と言っているのは、時間が経ってもこの二本の杉は、ここにありつづけるだろうから、これを目印にして、というニュアンスがあるように思われる。

  本居宣長は「古今和歌集遠鏡」の中で、「
又稲掛大平がいはく。上は又といはん序也。二本ある木の岐(また)の意につゞけたる也。」という 「また」を掛詞と見る説を紹介している。一見これは陳腐なこじつけのようだが、「ふたもとある杉」が、二本の木が別々に立っているのではなく、一つの根元から二つに分かれている杉のイメージと考えると、川の合流と再会(またもあひ見む)という歌の内容に合っているような気もするので、微妙なところである。 「年をへて」という言葉を使った歌の一覧は 596番の歌のページを、「あひ見る」ということを詠った歌の一覧については 97番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/11 )   
(改 2004/03/10 )   
 
前歌    戻る    次歌