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馬を連ねてさあ見に行こう、「ふるさと」はまさに雪のように花が散っているだろうから、という歌。当時の馬は今のサラブレッドのように細く美しい馬ではなく、 "駒なめて" という感じからはゆっくりと走りながら遠くの花の見物をしよう、という雰囲気もうかがえるが、ここではあえて、五、六騎の馬が雪のように降る桜の下を駆け抜けてゆくような爽快感のあるイメージでとらえてみたい。
"ふるさと" は「今では懐かしい場所」ということだが、90番の歌からは奈良の都を指しているようにも思え、あるいは 321番の読人知らずの歌や、325番の坂上是則の歌の 「ふるさと−吉野の山−雪」というイメージから、より南の吉野の山の麓あたりとも考えられる。また、この歌は「伊勢物語」にもないので何の根拠もない想像だが、ここに惟喬親王や在原業平らの姿を見るとすれば 「ふるさと」を渚の院と思えなくもない。その一方で、元永本などの伝本には、この歌の作者を藤原良房(=前太政大臣)とする左注があるそうであるが、そちらも例の「或人のいはく」というもので、これといった裏付けはないようである。
さて、この歌の続きとして考えるわけにはいかないが、 "駒なめて" 花を見に行こうと言っているのに対し、「駒とめて」水に映る影を見よう、と言っている次の 「ひるめのうた」を駒つながりで見ておきたい。
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