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       題しらず 読人知らず  
892   
   大荒木の  もりの下草  おいぬれば  駒もすさめず  かる人もなし
          
     
  • 下草 ・・・ 木陰などに生えている雑草
  • 駒 ・・・ 馬
  • すさめず ・・・ 好まず
  
大荒木の森の雑草が生い茂れば、そんな場所は馬も好まず、刈りに来る人もいない、という歌。 
「生いぬれば」と 「老いぬれば」を掛けている "大荒木" は地名かどうかは不明。一般的には「大殯」(おほあらき:=天皇などの遺体を葬儀まで安置しておく場所)ではないかとされている。

  この歌には 「または、さくらあさのをふの下草」と左注が付いている。 「さくらあさ」は 「桜麻」で麻の一種とも続く 「をふ」の枕詞とも言われ、「をふ」は 「麻生」で麻の畑のこと。 「さくらあさのをふの下草」という言い回しは、語感的には 505番の 「あさぢふの 小野のしの原 しのぶとも」という歌に少し似ている。

  「刈る」という言葉は次の兼芸法師の歌のように 「刈る−離(か)る」と掛けられることもあり、「かりにくる」ということでは 972番の「かりにだにやは 君がこざらむ」という読人知らずの 「うづら」の歌では 「狩り」と 「仮」が掛けられているが、この 「大荒木」の歌では特にそういうことは掛けられていない。単に人も寄り付かないということの譬えのようである。

 
803   
   秋の田の  いねてふことも  かけなくに  何を憂しとか  人のかるらむ  
     
        また、「駒」を使った似たような感じの歌としては、誹諧歌に次の読人知らずの歌がある。 「駒」を詠った歌の一覧は 111番の歌のページを参照。

 
1045   
   いとはるる  我が身は春の  駒なれや   野がひがてらに  放ち捨てつつ
     

( 2001/10/15 )   
(改 2004/01/30 )   
 
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