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       秋たつ日、うへのをのこども賀茂の河原に川逍遥しけるともにまかりてよめる 紀貫之  
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   川風の  涼しくもあるか  うちよする  浪とともにや  秋は立つらむ
          
        詞書は 「立秋の日、殿上人たちが賀茂の河原に川遊びに出かけた際、その供として行った時に詠んだ」歌ということ。歌の方は、川風が涼しく感じる、これは川辺に打ち寄せる波と共に秋が立ったからだろう、ということで、「波が立つ−秋が立つ(立秋)」を掛けており、 "うちよする" で 「寄せてくる」つまり近づいてくる、やってくるというイメージを秋の訪れに合わせている。接頭語「うち」が使われている歌の一覧については 12番の歌のページを参照。

  "浪とともにや" の「とも(共)」が詞書にある 「ともにまかりて」の 「とも(供)」に掛かっていると見るのは、歌の上からも意味が無く考えすぎであろう。ちなみに貫之集でのこの歌の詞書には 「とも」という言葉は使われていない。

  また偶然と言えば、春歌上と同じく、秋歌上でも貫之の歌が二番目に置かれているのも偶然かもしれない。ただ、どことなく 「先頭には出ないけれど、この位置は譲れない」というような自己主張が感じられないこともない。歌の内容はそつがなく、同じ貫之の 919番の 「あしたづの 立てる川辺を 吹く風に」という歌はこの歌と雰囲気が似ている。 "川風" という言葉を使った歌としては他に 
408番の「川風寒し 衣かせ山」という読人知らずの羇旅歌がある。

 
( 2001/10/10 )   
(改 2004/01/21 )   
 
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