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       朱雀院の女郎花あはせによみてたてまつりける 壬生忠岑  
235   
   人の見る  ことやくるしき  女郎花  秋霧にのみ  立ち隠るらむ
          
        人に見られるのが嫌なため、オミナエシは秋霧にひたすら隠れているようだ、という歌。この歌の場合 "立ち隠る" の主語はオミナエシであるが、次の友則の 「秋霧」の歌と並べてみると、「秋霧が立つ」ということにも合わせているように見える。

 
265   
   誰がための  錦なればか  秋霧の   佐保の山辺を  立ち隠すらむ  
     
        「立ち隠る/立ち隠す」という言葉を使った歌の一覧は 1038番の歌のページを参照。

  二句目が「ことや」ではじまる歌としては、108番に藤原後蔭の「花の散る ことやわびしき 春霞」という歌があり、この忠岑の歌はそちらをポイントして 「春霞−秋霧」としているものとも考えられる。 
「春霞」と 「秋霧」を詠った歌の一覧は 210番の歌のページを参照。

  歌自体は 「女郎花」を 「女(をみな)」に見立てた平凡さが目に付き、同じ 「秋霧−女郎花」という道具立てならば、次の誹諧歌の方が動きがあって面白いが、「女郎花あはせ」という場を考えれば無難なところなのかもしれない。

 
1018   
   秋霧の   晴れて曇れば  女郎花   花の姿ぞ  見え隠れする  
     

( 2001/09/06 )   
(改 2004/02/26 )   
 
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