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       寛平の御時、蔵人所のをのこども、嵯峨野に花見むとてまかりたりける時、かへるとてみな歌よみけるついでによめる 平貞文  
238   
   花にあかで  何かへるらむ  女郎花  おほかる野辺に  寝なましものを
          
        平貞文は生年不詳、没年923年。 906年従五位下、922年従五位上。古今和歌集にはこの歌を含め九首が採られている。

  詞書の意味は、「寛平の御時(=宇多天皇の時代)、蔵人所の人々が嵯峨野に花を見に行った際、帰る時にそれぞれ歌を詠んだ時に、詠んだ」歌ということ。歌の意味は、
花に満足していないのに、どうして帰ろうと言うのですか、オミナエシの多いこの野辺に、できれば泊まっていきたい気分なのに、ということ。

  228番の敏行の「秋の野に 宿りはすべし 女郎花」とほとんど同じ内容だが、異なる点は敏行の方が 「旅ならなくに」(=旅ではないけれど)と言っているのに対し、この貞文の方は詞書から 「旅寝」というイメージをはじめから持っていることと、 "おほかる野辺" とオミナエシの群生のイメージを見せていることである。それはもう「名をむつまじみ」というレベルではなく、「女郎屋でザコ寝」という感じで、品の無さでは貞文の方がまさっている。

  「あかで」という言葉を使った歌の一覧は 157番の歌のページを参照。また、「〜ましものを」という歌の一覧は 125番の歌のページを、「〜なまし」というかたちを持った歌の一覧については 63番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/21 )   
(改 2004/02/11 )   
 
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