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       大沢の池のかたに菊うゑたるをよめる 紀友則  
275   
   ひともとと  思ひし菊を  大沢の  池の底にも  誰か植ゑけむ
          
     
  • ひともと ・・・ 一本
  この歌は 272番の歌の詞書から引き継がれている 「寛平御時菊合」の時の歌である。詞書にある 「大沢の池」は、現在の京都府京都市右京区嵯峨大沢町の大沢池。 「かた」とは、州浜という模型のこと。歌の内容は、
一本だけと思っていた菊の花を、大沢の池の底にも誰が植えたのだろう、ということで、池に映った菊の花の影を詠んだものである。ナルキッソスのような人形(ひとがた)が池に手を伸ばしているイメージも考えられなくもない。

  "ひともと" という言葉を使った他の歌としては、春歌下に 99番の読人知らずの「このひともとは よぎよと言はまし」という歌と、雑歌上に 867番の読人知らずの「紫の ひともとゆゑに 武蔵野の」という歌がある。

 
( 2001/12/04 )   
(改 2003/11/19 )   
 
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