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       白菊の花をよめる 凡河内躬恒  
277   
   心あてに  折らばや折らむ  初霜の  置き惑はせる  白菊の花
          
     
  • 心あてに ・・・ あてずっぽうに
  百人一首にも採られていて有名な歌である。月の光に紛れた白梅を 「香をたづねてぞ 知るべかりける」と詠った同じ躬恒の 40番の歌と趣向が似ている。
折るならあてずっぽうに折ろう、初霜が置いて目を惑わせている白菊の花を、という歌。直感的には 「白菊」が初霜を 「置き惑わせる」と言っているように見えるが、「初霜が 置き+(人を)惑わせる」ということで、やや窮屈な表現である。

  また、この歌が映像としてイメージしづらいのは、"初霜" という言葉が 「その年はじめて地面に立つ霜柱」を思わせるからかもしれない。古今和歌集の 「初霜」の歌には次のようなものがある。

 
     
277番    心あてに  折らばや折らむ 初霜   凡河内躬恒
416番    夜を寒み  置く初霜を はらひつつ   凡河内躬恒
663番    笹の葉に  置く初霜の 夜を寒み   凡河内躬恒
993番    なよ竹の  よ長き上に 初霜   藤原忠房


 
        これらはみな置く対象の草葉と共に詠まれているとは言え、「草葉の上に降る霜」というイメージである。よってこの 「白菊」の歌も霜は地面ではなく葉の上に置いていると見てよいだろう。一色の氷の造形の中からどれを花として折ろうか、という感じの歌である。

 
( 2001/12/03 )   
(改 2004/03/08 )   
 
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