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       題しらず 藤原関雄  
291   
   霜のたて  露のぬきこそ  弱からし  山の錦の  おればかつ散る
          
     
  • たて ・・・ 縦糸
  • ぬき ・・・ 横糸
  • かつ ・・・ たちまち
  
霜の縦糸、露の横糸が脆いようだ、山の錦は織ると見る間に散ってゆく、という歌。 "山の錦" という言葉だけでも紅葉とわかるが、最後の "散る" という言葉の置き方が効果的である。

  こうした歌を 「ああ、紅葉の歌ね」というだけで済ませてしまうのはもったいない気がする。 「山の錦」というイメージを膨らませておいて、最後に "散る" と引き寄せている上手さを味わいたい。言葉の錬金術の寸止めという感じである。 56番の素性の 「春の錦」、297番の貫之の 「夜の錦」と並べて見たい。 「錦」を詠った歌の一覧については 296番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/28 )   
(改 2004/03/07 )   
 
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