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見渡せば、柳と桜を取り混ぜて、都は春の錦のようだ、という歌。絵画的で美しい歌である。言葉としては、漢詩に先例がありそうだが、 「柳」と 「桜」を "柳桜" と一つの言葉のようにまとめて軽く流しているところが面白い。また、錦つながりで言えば、この歌の"みやこぞ春の 錦なりける" という部分は、291番の藤原関雄の 「山の錦」、297番の貫之の 「夜の錦」と似た面白さがある。 「錦」を詠った歌の一覧については 296番の歌のページを参照。
「例解 古語辞典 第三版」 (1993 三省堂 ISBN4-385-13327-1)の付録の 「解釈の道すじ」という項に、この歌の "みやこぞ" の 「ぞ」について、「秋の錦」(=紅葉)に対して都こそが 「春の錦」であるという気持ちが込められている、という解釈があってなるほどと思わせる。
"こきまぜて" の 「こく (扱く)」には、
- (稲穂などを) しごき落とす
- (花などを) 摘み取る
という二つの意味がある。どちらも似たような感じでもあるが、この歌の 「扱き混ず」は後者からきた言葉で、「取って混ぜる」から 「取り(あつらえて)混ぜる」ということを表しており、 932番の歌の「山田の稲の こきたれて」などは 「しごき落とす」の方からきている言葉である。この 「扱く」が使われている歌をまとめてみると次の通り。
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