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       梅の花に雪の降れるをよめる 小野篁  
335   
   花の色は  雪にまじりて  見えずとも  香をだに匂へ  人の知るべく
          
        花の色は雪に混じって見えなくとも、せめて香りだけでも匂わせてほしい、人にその場所がわかるように、という歌。歌の中に 「梅」という言葉がないので、詞書でそれを説明している。

  
「古今和歌集全評釈(上)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-205979-7) でも指摘があるように、良岑宗貞(=僧正遍照)の次の歌はこの篁の歌と言葉の構成が似ている。ただそれぞれの歌から受ける印象がかなり異なるので、直接の影響があったものかどうかはわからない。小野篁は 802年生れ、良岑宗貞は 816年の生れである。

 
91   
   花の色は   霞にこめて  見せずとも    香をだにぬすめ   春の山風
     
        "人の知るべく" という言葉を使っている歌としては 664番に「人の知るべく 我が恋めかも」という読人知らずの恋歌がある。また、この篁の歌からは「香る雪」というイメージが浮かび上がってくるが、それは続く 336番の貫之の歌に引き継がれて行く。

  「だに」という言葉を使った歌の一覧については 48番の歌のページを、「匂ふ」という言葉を使った歌の一覧は 15番の歌のページを参照。

 
( 2001/09/03 )   
(改 2004/02/10 )   
 
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