題しらず | 読人知らず | |||
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散ってしまったとしても、香りだけでも残せ、梅の花よ、そうすればそれを恋しい時の思い出にしよう、という歌。なかなか無理な話だが、香りは本体が見えない状態でも漂うため、ならば本体が消えた後でも残って欲しい、という発想はわからないでもない。 「形見」という言葉は使われていないが、743番の歌のページの一覧にあるような 「形見」を詠った歌が思い出される。 また、34番の「待つ人の香に あやまたれけり」という読人知らずの歌などを見ると、「源氏物語」に出てくる 「梅花(ばいか)」にあたる薫物(たきもの)は古今和歌集の当時からあったように思える。実際の薫物は花の香りとは当然異なったものだろうが、歌の中では人の衣服に炊き込められた香りと花の香りは、お互いに連想されるものとして扱われる。この歌は純粋に梅の香を愛でたものであろうが、34番の歌と合わせてみると、そこまで名残を惜しむ理由は、そこから思い出される人のためとも考えられる。 "思ひ出" は 148番の歌などにある 「思ひ出づ」からきている言葉で、「思ひ出で(おもひいで)」と書かれることもある。 |
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また、「だに」という副助詞は 「せめて・最低限」というニュアンスを表し、次のような歌で使われている。似たような言葉である 「さへ」を使った歌の一覧については 122番の歌のページを参照。 |
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( 2001/11/28 ) (改 2004/03/10 ) |
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