題しらず | 読人知らず | |||
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たとえ些細な噂としてでも、他人が知ることができるようなやり方で、私が恋をするものか、という歌。二句目までは 「音」を導くための序詞である。 「だに」という言葉を使った歌の一覧については 48番の歌のページを参照。 「恋ひ+め+かも」で、「恋ふ」の未然形+意思を表す助動詞「む」の已然形+終助詞「かも」であり、この 「かも」は已然形に付いているので 「〜だろうか(そうではない)」という疑問を含んだ反語を表す。仮名序の最後の 「いにしへを仰ぎて、今をこひざらめかも」というのと同じ使い方である。 「かも」という言葉は、大きく分けて係助詞(疑問の助詞「か」+詠嘆の助詞「も」の連語)として使われる場合と、終助詞として使われる場合があり、終助詞の場合は、さらに前に体言や連体形をとるケースと、この歌でのように已然形をとるケースがある。古今和歌集の歌の中での使われ方を見てみると次の通り。 |
係助詞の「かも」(疑問の助詞「か」+詠嘆の助詞「も」): 疑問と詠嘆を表す |
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体言(連体形)+終助詞の「かも」: 詠嘆+疑問/感動を表す |
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已然形+終助詞の「かも」: 反語を表す |
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この歌は単体で見ると 「相手に知られず恋をしよう」という歌にもとれるが、古今和歌集の中の置かれている位置からすると 「人」は他人という感じである。同じような 「人」の使い方は、632番の業平の「人知れぬ 我がかよひぢの 関守は」という歌などにある。また、"人の知るべく" という言葉を使っている歌としては 335番の小野篁の「香をだに匂へ 人の知るべく」という歌がある。 |
( 2001/09/26 ) (改 2004/02/10 ) |
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