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       かみやがは 紀貫之  
460   
   うばたまの  我が黒髪や  かはるらむ  鏡のかげに  降れる白雪
          
     
  • うばたまの ・・・ 黒(髪)にかかる枕詞
  「わがくろ
カミヤ カハるらむ」という部分に題が詠み込まれている。 「かみやがは(紙屋川)」は京都府北区鷹峯あたりを源流とし、北野天満宮の西、上京区と北区の境界を流れる川。現在も京都府上京区に紙屋川町という名前が残る。

  歌の意味は、
私の黒髪が変ったのだろうか、鏡に映るこの白雪は、ということ。どの歌の言葉を重く見るかにより、白髪を雪と見ているとも、雪を白髪と見ているともどちらともとれる。
  • 我が黒髪 かはるらむ ・・・ まだ実際には変っていないとすれば、雪を白髪と見た
  • 鏡のかげに 降れる白雪・・・ 映った自分の髪に雪があるということは、白髪を雪と見た
  いずれにせよ老いの予感を詠った内容である。女性の立場での歌と考えられる。「髪+雪」ということでは、8番の文屋康秀の「春の日の 光に当たる 我なれど」という歌もある。

  "うばたまの" という言葉は 「烏羽玉の」でありカラスの羽の黒さを表す枕詞である。同じ物名の中の清原深養父の 「かはなぐさ」の歌にも使われており、そこでは 「闇夜」の連想から「夢」に掛けられている。

 
449   
   うばたまの   夢になにかは  なぐさまむ  うつつにだにも  あかぬ心を
     
        "うばたまの" の原型は 「ばたまの(射干玉の)」であり、それは草の(黒い)実の名前からきていると言われるが、藤原定家の写本による古今和歌集ではその用例はないようである(「古今和歌集全評釈(中)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-205980-0))。ただ 「ばたまの」ではなく 
ばたまの」という形が、526番554番647番、に見られる。

  基本的に 「ばたまの」か 「ばたまの」かということは、梅を 「うめ」と書くか 「むめ」と書くかということと同じで単に表記上だけのことであろう。賀茂真淵「古今和歌集打聴」では、これら五つをすべて「ば玉」あるいは「ばたま」と 「ぬ」に統一した上で、449番の歌の頭注に 「
むば玉うば玉ことによりてわかちあるといふはひがこと也」(ひがこと:=正しくないこと)と書かれている。

 
( 2001/09/26 )   
(改 2003/12/15 )   
 
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