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       題しらず 読人知らず  
531   
   はやき瀬に  みるめおひせば  我が袖の  涙の川に  植ゑましものを
          
     
  • みるめ ・・・ 海草の名前(海松布)
  
早い川瀬に海松布(みるめ)が育つなら、この袖の涙の川に植えたいものです、という歌。 「海松布−見る目(逢うチャンス)」を掛けている。少しあざとい感じもするが、 "はやき瀬" とはじめに出して、涙が激流であることを言う言い方は三十一文字を広く使っていて面白い。また、一般的には、海草が川に生えないことを逢う可能性が低いことに使っていると補助的に解釈されるが、この歌ではそこまでは考えていないような気もする。

  「涙川」が出てくる歌はこの歌や 466番の都良香(みやこのよしか)の物名の歌を含め全部で八首あるが、この歌と同じように 「涙の川」として使われている歌に二つ前に置かれた次の読人知らずの歌がある。 「涙川」を詠った歌の一覧は 466番の歌のページを参照。

 
529   
   かがり火に  あらぬ我が身の  なぞもかく  涙の川に   浮きてもゆらむ
     
        古今和歌集の配列としては、この 529番の歌の二つ前( 527番 )には 「涙川」の歌があり、530番で一つ 「かがり火」つながりの歌を置いたあと再び 「涙の川」のこの歌(531番)を持ってきていて、糸を編むような配置の工夫が見られる。

  また、 「みるめ」という言葉を使った歌の一覧は 669番の歌のページを、「〜ましものを」という言葉を使った歌の一覧は 125番の歌のページを参照。

 
( 2001/07/30 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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