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       題しらず 読人知らず  
536   
   あふ坂の  ゆふつけ鳥も  我がごとく  人や恋しき  音のみ鳴くらむ
          
     
  • ゆふつけ鳥 ・・・ ニワトリ (木綿付け鳥)
  
「あふ坂」のニワトリも自分のように恋しい人がいるのか、声を上げて鳴いてばかりいるようだ、という歌で"ゆふつけ鳥" がどんな鳥かという点以外はさして特徴のない歌に思える。 "音のみ鳴くらむ"の 「のみ」という強調が少し気になるが、855番の読人知らずの哀傷歌にも 「郭公 かけて音にのみ なくとつげなむ」とあり、何も手につかずに泣いてばかりいるという感じだろう。 「音に鳴く」という表現を持つ歌の一覧は 150番の歌のページを参照。

  この歌と似た感じの歌としては、ホトトギスを詠った次の藤原敏行の歌が恋歌二にある。

 
578   
   我がごとく    ものやかなしき   郭公  時ぞともなく  夜 ただ鳴くらむ  
     
        "あふ坂" は「あふ坂の関」(現在の滋賀県大津市逢坂一丁目あたり)、あるいはそれがある逢坂山あたりのことだが、そこに "ゆふつけ鳥" がいる理由は諸説あってはっきりしない。都を囲む四つの関所でニワトリに木綿(ゆふ)を付けて祓いをしたことによるという説が通説のようである。

  他に 「あふ坂−ゆふつけ鳥」のペアで出てくる歌としては、次の二つがある。

 
634   
   恋ひ恋ひて  まれに今宵ぞ  あふ坂の    ゆふつけ鳥は   鳴かずもあらなむ
     
740   
   あふ坂の    ゆふつけ鳥に   あらばこそ  君がゆききを  なくなくも見め
     
        「あふ坂」を詠った歌の一覧は 374番の歌のページを、 「ゆふつけ鳥」を詠った歌の一覧は 995番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/02 )   
(改 2004/02/25 )   
 
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