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       題しらず 読人知らず  
150   
   あしひきの  山郭公  をりはへて  誰かまさると  音をのみぞ鳴く
          
     
  • をりはへて ・・・ ずっと
  
山のホトトギスは誰にも鳴くことでは劣らないとずっと声を上げている、という歌。

  「音に鳴く(泣く)」ということは声に上げて鳴く(泣く)ということ。そこに 「のみ」という強調の副助詞が入っているのは、 "誰かまさると" という強めの言葉を受けてのことであろう。 「音に鳴く/音のみ鳴く」ものをまとめてみると次のようになる。

 
     
  ウグイス 15番    ものうかるねに うぐひすぞ鳴く  在原棟梁
498番    音に鳴きぬべき 恋もするかな  読人知らず
 ホトトギス 150番    誰かまさると 音をのみぞ鳴く  読人知らず
579番    鳴く音空なる 恋もするかな  紀貫之
855番    かけて音にのみ なくとつげなむ  読人知らず
 ツル 514番    思ひ乱れて 音をのみぞ鳴く  読人知らず
779番    あしたづの音に なかぬ日はなし  兼覧王
 ニワトリ 536番    人や恋しき 音のみ鳴くらむ  読人知らず
 カリ 776番    今朝初雁の 音にぞなきぬる  読人知らず
 ヒグラシ(セミ) 771番    思ひくらしの 音をのみぞ鳴く  僧正遍照
 ワレカラ(割殻) 807番    ねをこそなかめ 世をばうらみじ  藤原直子


 
        "誰かまさると" と言っているので、これらをその対戦相手として見るのも面白いかもしれない。

  上記以外にも 581番には清原深養父の「虫のごと 声にたてては なかねども」という歌があり、鳥や虫などに合わせずに 「ねになく(音に泣く)」ということを詠った歌には次のようなものがある。

 
     
577番    ねになきて  ひちにしかども 春雨に  大江千里
671番    松なれや  ねにあらはれて 泣きぬべらなり  読人知らず


 
        「をりはへ」という言葉を使った歌の一覧は 543番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/29 )   
(改 2004/03/08 )   
 
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