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「これさだのみこの家の歌合せ」の時の歌は、この歌を含めて二十三首が古今和歌集に採られているが、この歌以外は秋歌に置かれており、唯一この歌だけが恋歌二に置かれている。
歌の内容は、秋であるので鹿は山に響くように鳴くけれど、私もそれに劣ることはない、独り寝る夜は、ということ。"秋なれば" は 300番の清原深養父の歌で「神なびの 山をすぎ行く 秋なれば」と使われているものと同じで、「秋という季節であるので」ということ。現存する 「是貞親王家歌合」では、この歌の出だしは 「あきくれば」となっている。
この歌は 197番の藤原敏行の「秋の夜の あくるも知らず 鳴く虫は」という歌をさらに深めたものと見ることができる(その敏行の歌も詞書に 「これさだのみこの家の歌合せのうた」とあるが、現存する「是貞親王家歌合」には載っていない)。ざっと読むと 「鹿の鳴き声に劣らず激しく泣く」という 「詩的なオーバーな表現」の歌のように見えるが、実際には 「私が泣くその気持ちは、鹿の嘆きの深さには負けない」ということで、「山とよむまで鳴く鹿」と音量で勝負しているわけではない。
"我おとらめや" という反語と似たような表現で、ウグイスに対して 「我おとらましやは」と言っている歌に、次の春澄洽子(はるすみのあまねいこ)の春の歌がある。
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