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       題しらず 紀貫之  
583   
   秋の野に  乱れて咲ける  花の色の  ちぐさに物を  思ふころかな
          
     
  • ちぐさに ・・・ さまざまに (千種に)
  
秋の野に乱れ咲く様々な花の色のように、いろいろと物思いが多いこの頃である、という文字通りの歌で、「花が乱れて咲く」ということでは、春歌上の26番に「乱れて花の ほころびにける」という同じ貫之の「青柳」の歌がある。それを次の秋歌上にある読人知らずの歌と合わせて、恋の物思いの風味をつけたような感じである。

 
246   
   ももくさの   花のひもとく  秋の野に   思ひたはれむ  人なとがめそ
     
        この歌は 「恋の物思ひ」の歌であるが、少し後に出てくるやはり貫之の 589番の「露ならぬ 心を花に 置きそめて」という歌と同じく、「花」を扱っているために、どこか艶っぽい感じもあり、そうした意味では次の藤原興風の歌にも通じるものがあるように見える。

 
101   
   咲く花は  ちぐさ ながらに  あだなれど  誰かは春を  うらみはてたる  
     
        また、同じ「物を 思ふころかな」と結ばれている歌としては、993番の藤原忠房の「初霜の おきゐて物を 思ふころかな」という歌がある。

 
( 2001/11/05 )   
(改 2003/12/28 )   
 
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