題しらず | 壬生忠岑 | |||
609 |
|
命にもまして惜しく思えるものは、最後まで見ることができなかった夢が覚めたことである、という歌。後半は 「見はてぬ夢」だけでも意味として充分だが、それに "さむるなりけり" と念を押しているところが特徴と言えば特徴である。無理に作りこまずに自然に流した感じの歌である。 「惜しくある」ということでは、65番の読人知らずの「折りとらば 惜しげにもあるか 桜花」という歌や、342番の貫之の「ゆく年の 惜しくもあるかな ます鏡」という歌があるが、「命も惜しくない」という恋歌としては 615番の「命やは なにぞは露の あだものを」という紀友則が思い出される。 |
( 2001/11/28 ) (改 2003/12/30 ) |
前歌 戻る 次歌 |